不動産売却で媒介契約の途中解除は可能?違約金や解除手順も解説


不動産の売却を進めている中で、「思っていたよりも担当者の対応がよくない」「話が進まない」と感じ、不動産会社との媒介契約を途中で解除したいと考える方は少なくありません。しかし、契約の途中解除には、違約金や手続きに関する不安がついて回ります。本記事では、契約の途中解除にかかる違約金の有無や発生するケース、解除の流れと必要な注意点、不動産会社への不満がある際の具体的な対応方法についてわかりやすく解説します。媒介契約を見直したい方は、ぜひご一読ください。

専任媒介契約を途中解除する際に違約金は発生するのか

専任媒介契約は、契約期間(通常3か月以内)であっても、解除が可能です。契約書に違約金に関する特約がない限り、原則として違約金は発生しません。ただし、売主の都合による解除の場合には「費用償還」の対象となることがあります。

解除理由 違約金 発生 備考
契約書に違約金規定なし いいえ 特約が無い限り違約金は発生しません。
不動産会社側の落ち度(例:レインズ未登録、報告怠り) いいえ 適切な義務履行がない場合、解除に伴う負担はありません。
売主都合の解除(事情変更など) いいえ(ただし費用償還の可能性あり) 広告費・交通費など実費相当額を請求される可能性があります(上限は約定報酬額)。

具体的には、契約書に違約金について明記されていなければ、単純に解除するだけで違約金は発生しません。特に不動産会社に明らかな業務義務違反(例えば、指定流通機構への登録遅れや報告義務の怠りなど)がある場合には、違約金なしで契約を解除できます。

一方で、売主の事情(転勤・資金都合など)によって解除する場合には、不動産会社が既に行った広告費や交通費といった活動の実費償還が求められることがあります。ただし、その請求額が「約定報酬額」を超えることはありませんので、実費以上の請求には注意が必要です。

違約金が発生する具体的なケースと上限額について

専任媒介契約の期間中に、売主ご自身の都合で他の不動産会社と契約してしまうと、それは契約違反にあたります。この場合、不動産会社は「約定報酬額相当分」を違約金として請求することが可能です。約定報酬額とは、売却価格に応じてあらかじめ定めた仲介手数料のことを指します。たとえば、200万円以下なら5.5%、200万円超400万円以下は4.4%、400万円超は3.3%といったように、金額に応じた割合が定められています。

具体的には、以下のように算出されます。

売却価格の範囲約定報酬額の割合備考
200万円以下5.5%仲介手数料上限として適用
200万円超~400万円以下4.4%
400万円超3.3%

なお、上記の仲介手数料の算定は国が定める上限をもとにしており、不動産会社が違約金として請求できる金額の上限とも重なります。売却価格に応じた上限額については、法律上の基準として重要ですので、ご自身の契約書と照らし合わせてご確認ください。

さらに、もし請求された違約金の金額が高すぎると感じた場合は、契約書に記載された報酬額や算出根拠を明確に確認することが大切です。不当な請求と思われる場合には、日本司法支援センター(法テラス)や宅建協会などの相談窓口を活用し、専門的な立場から見直しをお願いすることも検討ください。

円満に契約を解除するための手順と注意点

不動産売却を依頼されている方が、媒介契約を途中で解除する際には、以下の手順と注意点を理解しておくことが、トラブルを避け、円満な契約解除につながります。

ステップ内容ポイント
1.解除の申し出電話または書面で、不動産会社に解除を伝える内容を残すためにも、書面やメールでの記録が望ましいです。
2.猶予期間の設定改善の猶予として、不動産会社に数日〜1週間程度の期間を与える法律上は必要ない場合もありますが、円満な解決のために設けるとよいでしょう。
3.契約解除通知書の送付書式を作成し、内容証明郵便などで通知を行う通知の事実が公的に証明されるため、後の紛争防止に有効です。

まず、不動産会社に解除したい旨を電話やメールで伝えることが可能です。しかし、記録として残すためには書面での通知が確実で安心です。

次に、改善の機会を設けたい場合は、不動産会社に対して3〜7日の猶予期間を提示しましょう。この期間に改善が見られない場合、契約解除に進むことが可能です。法律上は即時解除も認められるケースがありますので、柔軟な対応が可能です。

最後に、契約解除の意思を明確に書面で通知することをおすすめします。契約解除通知書には、「契約解除の意思」「契約締結日」「契約対象の物件」「理由(任意)」などを盛り込むとよいでしょう。内容証明郵便を利用すれば、確実に通知が届いた証拠を残せます。

以上のように、「申し出→猶予期間の設定→書面による通知」というステップを踏むことで、丁寧かつ確実に契約を解除することができます。不動産会社との関係性にも配慮しつつ、適切に手続きを進めていきましょう。

不動産会社の活動に不満がある場合の対応ステップ

不動産会社の対応に納得できない場合、まずは活動状況を確認することが大切です。以下の表をご覧ください。

確認事項 頻度・期限 確認方法
レインズ登録義務 契約締結後7営業日以内 レインズ登録証明書の提示を依頼
報告義務 専任媒介:2週間に1回以上
専属専任媒介:1週間に1回以上
メールや電話で報告頻度を確認
宣伝・広告活動 契約期間中 具体的な媒体・内容を問い合わせ

最初に、売却活動の進捗報告の頻度やレインズへの登録状況について、不履行がないかをしっかり確認してください。レインズ登録証明書の提示や報告の頻度・方法について具体的に問いかけることで、不履行があれば解除の正当性を明確にできます。標準媒介契約では、不動産会社には明確な義務が定められており、これが守られていない場合には正当な理由として解除が可能です(例:専任媒介では2週間に1度以上の報告義務、専属専任媒介では1週間に1度以上、契約後7営業日以内にレインズ登録)。

次に、改善のための催促を行ってください。「いつまでに」「どのように」対応して欲しいか、明確に伝えることが重要です。催促後にも改善が見られない場合は、契約解除も視野に入れられます。宅地建物取引業法では、先に相当の期間を定めて履行を催告し、その期限までに改善がなければ解除できると定められています。

さらに、円満に解除するためには、専門機関への相談も有効です。たとえば、法律相談窓口や弁護士、また宅建協会などの相談窓口に相談しながら進めることで、トラブルを回避できます。専門家と相談しながら進めることで、違約金や費用負担の発生リスクを最小限に抑えることも可能です。

まとめ

不動産会社との専任媒介契約を途中で解除する場合、多くの場合は違約金は発生しませんが、契約書の内容や実費の精算には注意が必要です。他の会社と重ねて契約した場合や、正当な理由がない場合には違約金が発生する可能性もあるため、事前に契約内容をしっかり確認しましょう。また、契約解除の際は書面で通知することでトラブルを防ぐことができます。ご自身が納得できる売却活動を進めるためにも、疑問点があれば早めに相談することが大切です。

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